貧血と言っても原因・分類は様々であり、今回は主に貧血の分類と原因についてお話したいと思います。
まず、貧血とは病名ではなく、血中のヘモグロビン濃度が低下した状態のことを表しています。ヘモグロビンとは、血中の赤血球の主成分であり、鉄を含む「ヘム」とたんぱく質の「グロビン」が結合したものです。働きとしては、主に全身への酸素の運搬や全身から二酸化炭素を回収するといった働きを担っています。
原因・分類
貧血の原因には様々なものがあるが、大きく分けて、①赤血球が造られる際の問題、②出血によって赤血球を失う、③溶血により赤血球が破壊されるというものがあります。
分類としては、赤血球の大きさ、含まれているヘモグロビンの量、濃度をもとに1⃣小球性低色素性貧血、2⃣正球性貧血、3⃣大球性(正色素性)貧血というように大きく3つに分けられています。
1⃣小球性低色素性貧血:鉄欠乏性貧血、鉄欠乏性貧血、サラセミアなど
・鉄欠乏性貧血:ヘモグロビンの材料の鉄の摂取不足や吸収障害、出血によって失うことによる貧血。最も患者数が多く一般的な貧血。女性は妊娠・出産時などに鉄の需要が増えることもあり不足しやすい。また、月経時の出血、過度なダイエットなどによっても不足しやすいこともあり女性に多い。食品からの鉄の吸収は胃で行われる為、胃切除後、半年から数年ぐらいで発症しやすいとされています。
2⃣:正球性貧血:溶血性貧血、急性出血、再生不良性貧血、腎性出血など
・貧溶血性血:赤血球の破壊(溶血)による貧血。壊れやすい異常な赤血球が造られてしまう先天的なものと、他の免疫疾患、薬剤、感染症の影響によって正常な赤血球が破壊されてしまうものがあります。
・再生不良性貧血:赤血球、白血球、血小板などのもとになる造血幹細胞の異常や障害によって、赤血球などが上手く造られなくなることによる貧血。一部先天的なものもあるが、大部分が後天的なものがあります。後天的なものでも原因がはっきりしないもの(特発性)がほとんどで、薬剤、感染症など原因が分かっているもの(続発性)は一部のみとなっています。
3⃣:大球性正色素性貧血:巨赤芽球性貧血(悪性貧血、葉酸欠乏性貧血)など
・巨赤芽球性貧血:DNA合成に関与するビタミンB12や葉酸の欠乏によって、未成熟で巨大化した異常な赤血球が造られることによる貧血。ビタミンB12の欠乏によるものには悪性貧血があり、葉酸の欠乏によるものは葉酸欠乏性貧血と呼ばれています。ビタミンB12は動物性食品に含まれており、ベジタリアンの方などかなり偏った食生活をしていない限り、摂取不足になることはありません。ビタミンB12不足は、その吸収に関与する内因子が関与していることがあります。内因子は胃の粘膜で分泌されている為、胃を切除した方はビタミンB12が上手く吸収できず、体内に貯蔵しているビタミンB12がなくなれば貧血になってしまいます(切除の度合いにもよるが、胃切除後5年ぐらい経過してから発症する場合が多い)。葉酸は、緑黄色野菜、レバーなど様々な食品に含まれている為、基本的には摂取不足になることはありませんが、体内での貯蔵量が少ないため、妊娠や、薬、病気の影響で需要が増えたり、吸収が上手くできなくなると不足してしまいます。
貧血の原因や分類についてのお話でした。次回は、患者数が最も多い鉄欠乏性貧血についてより詳しくお話していきたいと思います。