貧血➁ | やまかわ薬局

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2021年7月19日

貧血➁

今回は、以前お話した貧血の中で最も多い、鉄欠乏性貧血についてお話したいと思います。

鉄分について

健常人の体内には約3~4gの鉄分が含まれており、その中の70%程度は血液中のヘモグロビンや筋肉中のミオグロビンの構成成分として存在しています。その他の鉄は、貯蔵鉄や酵素の構成成分として存在しています。

ヘモグロビンと結合する酸素のイラスト

ヘモグロビン:全身への酸素の運搬、全身から二酸化炭素を回収。

・ミオグロビン:心筋や骨格筋などの筋肉中に含まれ、ヘモグロビンによって運ばれてきた酸素の受け取り、貯蔵の役割を担っている。

貯蔵鉄:鉄とたんぱく質で構成されるフェリチンという形で、肝臓などに貯蔵されています。体内の鉄の20~30%程度を占めていて、鉄が不足しているときなどの必要時にのみ利用されます。

血清鉄:血液中でトランスフェリンと呼ばれる輸送蛋白と結合している鉄。食物から吸収された鉄や貯蔵鉄などが輸送されている状態です。

正常な場合、体内でヘモグロビンの合成などで使われている鉄のほとんどは再利用されている為、体内の鉄のうち1日で失うのは約1mg程度とされています。1日に成人男性では約8mg、成人女性では約18mgの鉄の摂取(年齢、女性の場合は月経、妊娠、授乳の有無等によって異なる)が望ましいとされており、摂取した鉄の一部が吸収され、失った鉄を補っています。

鉄が不足する原因

・需要が増える:妊娠中や授乳中、成長期。

・摂取、吸収不足:食事の偏り,過度なダイエットによる摂取量の低下。吸収率が低下する原因としては、胃の切除、胃酸の分泌量低下。コーヒーや紅茶などに含まれるタンニンやインスタント食品などに含まれるリン酸なども鉄の吸収を阻害するとされています。

・喪失:出血により血中の鉄が体外に出てしまう。痔などの出血を伴う疾患、月経など

症状

一般的な貧血症状に加えて、さじ状爪、舌炎、口角炎、異食症(氷を食べたがる)などの症状が現れることがあります。初期の場合症状が出ないことも多く、健康診断などで採血をした際に見つかる場合が多い。

診断ヤギのお医者さんのイラスト

鉄欠乏性貧血の診断は、赤血球数、ヘモグロビン濃度(Hb濃度:g/㎗)、ヘマトクリット値などの低下によって貧血と診断され、赤血球容積(MCV)、平均赤血球血色素量(MCH)、平均赤血球血色素濃度(MCHC)の低下で小球性低色素性貧血と分類、さらに血清鉄の低下、総鉄結合能(TIBC)の増加、フェリチンの低下等が認められることによって診断されます。

治療薬のイラスト「薬の紙袋」

軽度の場合は、食生活の改善のみで様子を見る場合もあります。治療薬としては、鉄剤を内服もしくは注射します。内服薬による治療が一般的ですが、吐き気やむかつきなどの消化器症状が現れることがあるため、服用継続が困難な場合に注射による治療を行う場合があります。一般的に、1~2か月程度で、ヘモグロビン濃度等の検査値は改善してきますが、貯蔵鉄が正常値まで改善するまで服用を継続するのが基本となっているので、多くの場合は6か月程度は服用を続けることになります。薬による治療を行う場合でも食生活の改善は重要です。

 

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